湿潤療法に関しての補足

pedalfar2009-08-05

前回のエントリーから随分間が空いてしまった。ここ数年やらせてもらっているIT系コンベンション(11月開催)の仕事がキックオフになったことと、原稿書きが重なってしまってブログまで手が回らなかった。実は来月また本が出るのだ。今までの二冊とは毛色の違った本なのだけど、これについては次かその次のエントリーで詳しく書く予定。

前回の湿潤療法のエントリーには沢山のはてなブックマークをいただいた。湿潤療法を実体験した者として、この療法を多くの人に知ってもらえればと思い書いたのでよかったと思う。但し、医療関係者の方から「素人判断は注意」といったコメントもあった。これは僕もそう思う。皮膚表層の擦過傷には効果があると思うけれど、傷の深さやその他の要因で注意が必要なケースもあると思う。また今では家庭用ラップではない専用の被覆材もある。傷の程度によっては「これはちょっと医者に相談したほうがよさそうだ」と思ったら迷わず病院で診断してもらってほしい。

はてブのコメントも沢山いただいたので、僕のわかる範囲で補足しておく。


・実際にどのようにラップしたのか?
これはラップした状態の写真を撮っていないのだが、こちらのページに写真がある。僕のラップ方法もこれと同じだ。擦過傷の範囲より一回り大きめのラップを患部にあてて四辺をテープで固定する。この状態で出歩くのもアレなので、この上から包帯を巻いていた。


・試してみたことがあるけれどラップするのが面倒だった。
確かに面倒ではある。僕は朝晩二回ラップを交換していた。脚なら自分一人で出来るけれど、腕にテープを貼ったり包帯を巻くのは難しい。これはカミさんに手伝ってもらった。専用の被覆材ならぺたっと貼ればいいので一人でも手間がかからないだろう。


・開放療法のほうがいいのでは?
ラップの四辺を塞いで体液が漏れないようにする閉鎖療法に対して、一部を塞がずに余分な体液をラップの外に出す方法を開放療法と言う。その場合はラップの上にガーゼや吸収材をあてて体液を吸い取らせる。残念ながら僕は閉鎖療法しか試したことがない。どういう状態だと閉鎖療法、或いは開放療法がいいのかよくわからない。これは夏井睦さんのWEBサイトなどで調べてみてほしい。但し、前のエントリーにも書いたけれど、体液のにおいが非常にきついので、開放療法の場合、このにおいに対するケアは必要だと思う。多分消臭効果のある吸収材もあるのだと思う(吸収材は紙おむつなどと同じ水分を吸ってゲル状になる素材)。


傷の治りが早いということが第一ではあるけれど、日常生活での制約が少ないのが湿潤療法のいいところだと思う。特に患部を水に濡らすこと(=入浴)に気を使わなくていいというのが楽だ。以前、別のケガで普通の治療をした時は、ガーゼをあてて包帯を巻いた部分を濡らさないように入浴するのに苦労した。湿潤療法ならば入浴前にラップをはがし、普通にシャワーを浴びて患部も洗い、入浴後に再度新しいラップをあてればよかった。水が滲みることもなかったし、そうやって洗って清潔に保つことも直りを早くすることにつながるのだと思う。

またこれは治癒効果とは関係ないが、ガーゼをあてて患部を乾かして瘡蓋ができて傷が治るというプロセスとは違って、自分の皮膚上で体液を使って新しい皮膚を培養しているような、一種実験というか、観察というか、そんな不思議な感覚を味わった。実際、治癒スピードも速いので観察するのも楽しい(笑)。いずれ被覆材は皮膚組織に近いものになり、貼ったままで交換も必要なく、一部は皮膚に吸収され、治癒すると余った部分は自然と剥がれる(日焼け跡の皮が剥けるように)そんな感じになるのではないだろうか。

もともと湿潤療法の研究は消毒液や薬品などが不足しがちな戦地で負傷した兵を、出来る限り早く治癒させて戦線に復帰させるためだったと聞く。傷を負ってもぺたっとシート一枚貼って戦線にするとか。「ああ、なるほどなぁ」と思う。

湿潤療法・ラップ療法で検索すると結構な情報が拾える。ホビーレーサー・ブロガーとして有名なコナさんも以前落車した際に湿潤療法を行い、経過をレポしている。コナさんはお医者さんなので僕より専門的なレポになっているので興味のある方は参考にしてください。

上の画像はこの落車の際に、脚にめり込んで最後までとれなかった小石だ。落車して細かい砂利が沢山めり込んでしまった時は歯ブラシでそれらをかき出すという。僕は歯ブラシは使わなかったけれど、ピンセットで引っ張り出そうと頑張ったものの、これが最後まで取れなかった。結局、傷口をナイフで数ミリ切って広げて取り出した。前のエントリーに書いた「慣れれば自分で抜糸できる」というランス・アームストロングの話じゃないけれど、自転車乗りってケガ慣れしてくると、そういった部分が麻痺してくるというか、平気になってしまう。いいのか悪いのかわからないけれど。