ビギナーにオススメのロードバイクを20台選んでみた

pedalfar2009-08-10

2012年11月13日追記:自転車小説を書きました。タイトルは「追い風ライダー」。自転車好きの方、自転車に興味のある方ならば、きっと楽しんでいただけると思います(^^
「オススメのロードバイクを教えてください」と時々聞かれる。個人的趣味で20台ほど選んでみた。アルミフレーム、アルミ+カーボンバック、クロモリフレーム、レディスモデルに分けてある。
最初にお断りしておくが、僕はこれらのバイクを試乗したわけでも店頭で実車を確認したわけでもない。ネットで知りうるスペックだけで選んでいる。選択基準はあくまで僕の好みだ。価格帯は実売で15万程度以下を想定している(価格表示はメーカー希望小売価格)。残念ながらこの価格帯ではカーボンフレームには手が届かない。それと8月、9月はすでに各メーカーのニューモデル(2010年モデル)発表の時期で、ここにあげた2009年モデルはすでに在庫のないものもあると思う。

■アルミ
ジャイアント DEFY 1 141,750円
最近のジャイアントはデザインがカッコいい。(105+ティアグラ ミックス)
インターマックススポーツ RAYS 138,600円
僕の最初のロードバイク。今となっては特に目立つ部分はないけれど丈夫で長持ち。(ティアグラ)
ブリヂストンアンカー RA5 Sports 148,000円
安心の国産ブランド。カラーオーダーが可能。(ティアグラ)
トレック 2/1シリーズ 1.5 145,000円
カラーリングが他社には無い色。(SORA+ティアグラ ミックス)
ビアンキ vianirone7_alu_hydro 132,300円
ハイドロフォーミングパイプ使用。(ティアグラ)
スペシャライズド Allez Sport Compact Double 160,000円
スペシャらしいガンガン走りそうなイメージ。(105+他社ミックス)
スコット SPEEDSTER S45 CD 144,900円
フロントフォークがよさげ(ティアグラ+他社ミックス)
フェルト F85 162,750円
フェルトらしいデザイン。カッコいい(105)
ルイガノ LGS CTR 126,000円
デザイン一新のルイガノ(ティアグラ)
コルナゴ Primavera 183,750円
デザインは僕好み。カッコいい(ティアグラ)(22万の105組みもあり)
キャノンデール CAAD9-7 159,000円
アルミフレームとしてはピカイチ(SORA+ティアグラミックス)

■アルミ+カーボンバック
ブリヂストンアンカー RCS5 Sports 158,000円
この価格でカーボンバックでティアグラ組みは安い(ティアグラ)
ピナレロ FP1 178,000円
この価格でピナレロのカーボンバックが買えるのはすごいけど、メインコンポはSORA(SORA+他社ミックス)

■クロモリ
バッソ Viper 132,900円
クロモリのホリゾンタルは美しい(ティアグラ)
ビアンキ IMOLA 128,000円
クラシカルなデザイン(SORA+他社ミックス?)
ジェイミス SATELLITE 109,000円
こちらもクラシカルでいい感じだけどやけに安い(SORA+ティアグラ+他社ミックス)
アンカー RCN3 Sports 148,000円
伝統のクロモリスタイル。フォークもクロモリ(ティアグラ)

■レディス
トレック 2/1シリーズ 1.5WSD 145,000円
デザインさわやか。乗りやすそう(ティアグラ)
ブリジストン アンカーRA5 Women 123,000円
ちょっとデザインは素っ気ないか。補助ブレーキ付(SORA)
キャノンデール シナプス・フェミニン7 179,000円
こちらも乗りやすそう(SORA+ティアグラ+他社ミックス)


ここにあげた各モデルは完成車と呼ばれるもので、フレームにパーツが付き自転車のカタチになって売られているものだ。極端なことを言えば、店頭で気に入ったモデルでサイズが合ったものがあれば乗って帰ることができる。ほとんどの人は最初の一台はこの「完成車」で買うことになるだろう。ある程度乗り込んで自分の好みもわかってくると二台目以降は「フレームはこれ、ハンドルはこれ、ホイールはこれ、コンポはこれで」といった自分なりのアッセンブルで組み立てて買うことになる。普通、ある程度乗り慣れた自転車乗りは後者の買い方をする。自転車乗りが「新車を買う」とは言わず「新車を組む」というのはそういう意味だ。
ビギナー向けのモデルではフレーム素材はアルミが主となる。アルミは90年代に主流だった素材だ。今では各メーカーの主力はカーボンに移り、ごく一部のメーカーを除けば積極的に素材としてアルミの開発を進めているところはない。但し90年代から2000年代初めにかけてアルミは様々なパイプが開発され、軽量化を追求したもの、乗り心地を重視したもの、徹底的に剛性を上げたものなど、様々な味付けのパイプが作られ、それらは実戦で使われて洗練されていった。つまりアルミはすでにノウハウが十分に蓄積された「枯れた素材」と言えるだろう。
ビギナー向けのアルミフレームは主に耐久性に振ったパイプが使われているのだと思う。パイプの肉厚はある程度厚く、上位モデル(カーボンなど)と比べて必然的にやや重い。パーツも特に軽いものは使われていない。ペダルなしの状態で10kg前後だろうか。剛性は高く乗り心地は硬い。そのかわりロードバイクらしい「ガツンと踏んだら一気に進む」感覚を体感できる。ある程度は剛性感と乗り心地のバランスをとってはいると思うけれど基本的には硬い乗り味と思っていたほうがいい。初めてロードバイクに乗るならば硬さにびっくりするだろう。

この価格帯のエントリーモデル、特にアルミのものは「どれも極端な性能差はないので好きなデザインで選べばいい」と言われる。まあ確かにそうかもしれない。しかしエントリーモデルとはいえ、10万円以上の自転車だ。初めてロードバイクを買う人にとっては決心のいる金額だ。当然「長く乗れるもの」を買いたいと思うだろう。しかし「長く乗れる」といっても実際に物理的な製品寿命まで乗る人はまれだ。どういうことかというと、ハマった人はすぐに次の(もっと高い)バイクが欲しくなる。まだロードバイクに乗っていない人には信じがたい話かもしれないが、ハマった人は1年以内に必ず次のバイクを買ってしまう。
ハマった人はロードバイクに関する情報をどんどん吸収する。一緒に走りに行った人のバイクが気になる。今一番ロードバイクを買っているのは中年オヤジたちで(僕も含む)皆、いいバイクに乗っているのだ。半年、一年と走り込むとそこそこ自分も走れるようになってくる。そうするとどうしても「もっといいのが欲しい」となる。製品寿命というわけでも、その性能が自分の脚に見合わなくなってくるわけでもなく、まあ、要するに、もっとグレードの高い(=見栄の張れる)バイクが欲しくなってしまうのだ。僕の周りを見渡しても、15万程度のエントリーモデルを最初に買って、その次はいきなり50万とかつぎ込んでしまう人はざらだ。

とはいえ、そうそう大金をつぎ込める人ばかりではないし、そこまでお金を突っ込まずに長く最初の一台を楽しみたいという人も多いだろう。あまり見栄に左右されることなく、時々リフレッシュさせて「長く乗れる」ロードバイクの選び方はある。僕のオススメする選び方は「素性のいいフレームの完成車を買う」ということだ。素性のいいフレームの完成車を買えばパーツのグレードアップで長く楽しめる。
たとえばキヤノンデールのCAAD9は完成車の価格で3ランクあるけれどフレームは同じものだ。一番高いCAAD9-5は239,000円、一番安いCAAD9-7は159,000円。価格差は使われているパーツやホイールの価格の差である。一番安いCAAD9-7を買ったとしても、いずれパーツを交換していけばトータルでCAAD9-5と同じ性能に進化させることができる。もちろん乗り込んでいって少しずつ自分の走りに合わせたパーツに交換することで、自分オリジナルのCAAD9にすることもできる。つまりリフレッシュさせて「長く乗ることができる」。長く乗るという意味には、そうやって長く楽しめるし、素性のいいフレームならば実際にパーツ交換でのポテンシャルの上げ幅も大きいという意味もある。キヤノンデールはアルミのオーソリティであり、今でもアルミを進化させている数少ないメーカーだ(とはいえCAAD10が出てくるかは疑問だが)。従ってCAAD9は今現在、世界で最も進化したアルミフレームだと言える。今でもレースに使うプロもいる。そういう意味でも「エントリーモデルだ」という引け目を感じずに長く乗れると思う。実際、CAAD9は価格は安いけれどエントリーモデルという位置付けではないし、コンポを105にして、ちょっといいホイールを履けばレースでも全然OKだ。

トレックもアルファアルミというトレックが開発したアルミパイプを使った2/1シリーズというラインがあり、キヤノンデールと同じく、同じフレームでパーツのグレードで価格差をつけている。ジャイアントのDEFYシリーズもDEFY 1〜3とあり同じような構成だし、スコットのSPEEDSTERも同じだ。但しフレームの魅力からいくとキャノンデールが一歩抜けていると思う。
しかしまあ、各メーカー同じフレームでパーツのグレードで価格差を付けているけれど、高いもののほうがデザインもカッコいいように思える。ジャイアントのDEFYなど、あきらかにDEFY1がシンプルでカッコいい。メーカーとしては高いものを買ってもらいたいわけだから当然だが、その点、キャノンデールはカラーの違いだけで素っ気ないと言えば素っ気ないし、良心的と言えば良心的か。
ビアンキはハイドロフォームという方法で作られたパイプを使っている。ハイドロフォームとはパイプの内側から液体で圧力をかけてパイプ形状を変形させて乗り心地や剛性の味付けを行ったパイプだ。異形のパイプは好き嫌いが分かれるところだろう。
フェルトもアルミで定評の高かったメーカーだ。日本に入ってきた当時は販路を一般の自転車店に一気に広げたので「近所の自転車屋でも売っている」という気安さからちょっと素人っぽいブランドイメージがあったが、ツール・ド・フランスにも出場したプロチーム(チームガーミン・チボレ)への機材供給などでそれも変わってきた感じだ。この「ブランドのヒエラルキー」というバイアスがかからなければ、フェルトのデザインはロゴも含めてカッコいい。

アルミ+カーボンバックはシートステーとチェーンステーがカーボンのものはこの価格帯ではなく、シートステーだけのカーボンバックだ。正直なところ、フルアルミに対するカーボンバックの快適性は、シートステーのみのカーボンバックでは僕にはあまり効果がわからない。個人的には気持ち乗り心地がよくなる程度。その差は数百キロ走ってどうか、というレベルだと思う。但しカッコはいい。ヤル気っぽく見える。

クロモリは伝統的なフレーム素材で、一般的には振動吸収性が良く長い距離を走っても疲れないと言われる。クロモリでも硬いパイプはあるし乗り心地が柔らかいものばかりではないけれど、アルミに比べればどれも乗り心地はいい。エントリーモデルに使われているものは乗り心地方向に振った味付けだと思う。細身のパイプで組まれたフレームはトラディショナルな雰囲気で美しい。但し、アルミよりは総じて重い。

使用しているコンポーネントはよく「105以上を買え」と言われる(コンポーネントとは前後の変速機、前後のブレーキ、クランク、変速・ブレーキレバーなどのパーツセットのことだ)。世界最大の自転車パーツメーカーであるシマノコンポーネントのグレードは下からSORAティアグラ105アルテグラデュラエースとなっており、SORAとティアグラはレジャーユース、それ以上はレースユースとされている。決定的な違いはギヤの段数が前者は9速、後者は10速になる。105以上はグレード間でのパーツの互換性があり、たとえば105を使っているけれど、フロントの変速性能アップのためにフロントディレイラーだけアルテグラに交換するといったことが可能だ。
但し、個人的な感想だがちゃんと調整されたティアグラの変速性能はアルテグラと遜色ない。唯一決定的に違うのはブレーキアーチの剛性で、上位コンポのブレーキ性能を知ったあとではティアグラのブレーキはやや心許なく感じる。もちろん普段使いの範囲で危険を感じるようなものではなく、あくまで上位モデルのかっちりした感じを知ると、ということだ。予算が許せば後々のグレードアップのためにも10速の105で組まれた完成車をオススメするが、9速のティアグラでも実用上で不満が生じることはないだろう。実際のところ、シリアスにレースをする人以外はコンポーネントの交換も自己満足と言っていい(そういう僕もデュラエースを使っているのだがw)。
各モデルのメインコンポを書き出しておいた。他社と書いてあるのはテクトロFSASRAMなど。メインコンポはティアグラだけどブレーキだけテクトロとか、クランクはFSAとかの安いパーツを使ってコストダウンをしている。本当ならばブレーキはシマノを使って欲しいところだが、なぜかここでコストダウンする(テクトロを使う)メーカーが多い。ピックアップしたスペシャライズドのモデルは105がメインコンポだがブレーキだけがメーカー不詳だ。僕の感覚だと他のパーツがティアグラでもブレーキが105のほうが印象がいいと思うのだが。「ビギナーはその辺りは気にしない」とナメているかと思う。
プロショップで気の利いた店ならば完成車でもパーツの差額交換をしてくれるところもある。たとえばティアグラで組まれているけれどブレーキだけ上位グレードにしたいといった時、普通ならば上位グレードのブレーキを別途購入して交換するのだが、ティアグラと交換ということで差額分だけで交換してくれる店もある。

コルナゴピナレロといったヨーロッパのトップブランドのバイクは「二割はブランドの値段」と言われる。もちろん歴史も実績もあるブランドだし、エントリーモデルでも「そのノウハウが注ぎ込まれている」とメーカーは言う。その辺りも含めてもちょっと割高感はあるけれどそのブランドに魅力を感じるならば所有する喜びもあるだろう。ただ、この手のブランドのエントリーモデルに乗っていると「あ、コルナゴの一番安いやつね」とか言われがちだ(イジワルですねw)。これらのブランドもエントリーモデルはほとんどが台湾で作られている(台湾は世界最大の自転車生産大国だ)。made in italyとか思って買うとがっかりするので一応お知らせしておく。

「ロングライド向きのモデルは?」というのもよく聞かれる。確かにクロモリフレームはロングライドにむいているだろう。しかしはっきり言ってレースのようなスピードで走るのでなければ200km程度まではフレーム素材での差は大差ないと思う。アルミだから200kmはきついとか、あまり関係ない。ましてや100km程度では差はない。
それから「コンパクトクランクがいいの?」ということもよく聞かれる。今はエントリーモデルは最初からコンパクトクランクのものが多い。wikipedia:コンパクトクランク

ちなみに僕の一番最初に買ったバイクはインターマックスのRAYSだ。もう7年前になるけれど、今でも通勤バイクとして現役だ。もはやフレッシュ感はないけれど、ちゃんと30km/h巡航できるし普段乗りに不満はない。長く乗ろうと思えばエントリーモデルは丈夫で長持ちなのだ。先に書いたようにハマればすぐにいいヤツが欲しくなる。もし二台目を買ったなら最初の一台は僕のように通勤や普段乗りに使えばいい。最近はロードバイクの盗難が非常に多い。おいそれと街中に止めておくこともできない。使い込んだエントリーモデルなら盗まれる危険も少ないだろう。

「で、今もし最初の一台を買うならどれなのよ?」と聞かれたら・・・
バリバリ走るなら、やはりキャノンデールのCAAD9-7かな。僕はホリゾンタル(トップチューブ=フレームの上のパイプが水平のもの)が好きだし。少しゆったり走るならバッソのViper。これは今の自分がセカンドバイクとして欲しい。クロモリのホリゾンタルフレームは美しいし価格も手頃だ。細かいチョイスのポイントもあるけれど(たとえばフロントフォークのコラムがカーボンか金属か、カーボンのシートポストが付属するとか、アルミパイプ自体の素性とか)随分長いエントリーになってしまったので、それはまた別の機会に。

ただ個人的には最初の一台は気に入ったデザインのアルミの硬いフレームでガンガン踏んでガンガン走って欲しいと思う。きれいなペダリングじゃなくても踏めば踏んだだけ、どんどん前に進む感覚は「ロードバイクってすごい!たのしー!」ときっと思えるはず。それがロードバイクの一番の魅力だと思うんだよね。

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---追記(090812 12:30)---
CyclingEXさんが20万円ではじめるロードバイクライフという記事で目的別5台のロードバイクをセレクトしています。こちらも参考にしてください。