子猫を拾ってしまった。


ケガをしている子猫を保護した、というか拾ってきてしまったのですが。
我が家の近所には何ヶ所か猫の集落があって、比較的小さな集落(一ないし二家族が居着いている)に子猫がいるとカミさんが言うので見に行ったところ、一匹、あまり動けないコがいて、抱き上げたら右前脚に大きな傷口。他の脚の倍くらい腫れている。どうやら動かせない様子なので骨も折れているかもしれない。

子猫って抱き上げてしまった瞬間に(子猫も抱き上げてしまった人間も)運命の半分くらい決まってしまうようなもので、子猫を飼ったことがある人ならわかると思うけれど、抱いてしまった瞬間に「情」が生まれてしまう。ケガをしていたならなおさら。
家に連れて帰って翌朝、動物病院に連れていったところ、骨は大丈夫そうだけど脚はもうほとんど動かせない様子。傷口から大量の膿を出して中を洗浄し、抗生剤を打って点滴をして一泊入院。今朝、迎えに行って家に連れて帰ってきた。ウチで抗生物質を飲みつつ、明日から数日、通院して様子を見る予定。食欲旺盛だし、なにより目の光りが強いのでなんとか元気になってくれるのではないかと。

野良猫たちをよく眺めていると、だんだんと猫センサーが鋭くなっていって、どこの街を歩いていても(自転車に乗っているときも)野良猫を見つけてしまう。そしてそのなかには時々ケガや病気でひどい状態の猫もいる。なんとかしてあげたい思っても、どうしようもない。もちろん絶対に助けたいという意志があれば助けられるのだけど。「なんとか生き延びて」と思いながらその場をあとにする。私が書くストーリーの中で登場人物が野良猫を拾うのは、そんな思い出への懺悔のよう。昔、拾ってきた子猫が私の手の中で息絶えてしまったことがあって、あの無力感を思い出すと今でも胸が痛くなる。多分、猫が死ぬシーンは一生書かないだろうな。

このコの母猫は、私がこのコを抱き上げるのをぼんやり見ていた。「このコを助けてくれるのならお願いします」なのか、もうすでにこのコへの気持ちが薄れていたのか。別の猫集落の母猫はいつも子猫のすぐ近くにいて、私が子猫に近寄ろうとすると思い切り威嚇する。母猫もいろいろだ。

なんとかこのまま元気になってくれれば、初めての三匹同居になるか。他の二匹の同意を取り付けなければ。