Tumblr(タンブラー)を情報発信に使う。そして僕がCyclingEXを応援する理由とは。

またTumblrのお話。例によって左の画像の説明はのちほど。
もしビジネスの世界でTumblrを使うなら、どういう企業や業態がマッチしやすいのだろう。ちょっと考えてみた。(前回前々回

Tumblrは質より量」というのはTumblr界隈の名言のひとつ。ポストの質を問わないとは言わないけれど、ある程度の量がないとなかなか存在感は出てこない。これは使っている人は実感としてわかりますよね。たとえば週に一回、リリースのようなものをポストするだけならTumblrじゃなくてもいいし、そもそもその程度の動かし方だと、よほどバリューのあるブランドでもない限りフォロワー自体が集まらない。かと言って自社の製品やサービスの内容を事細かく大量にポストし続けてもやっぱりそれも「どーなのよ」という話だ。
じゃあどういうものが親和性が高いのか。僕の知っている範囲で「うまく使っているな」と思うのは前のエントリで書いたLOOKBOOKというサイトだ。LOOKBOOKはいわゆるファッション投稿サイトで世界中から多くのユーザーが自分のコーディネート写真を投稿している。LOOKBOOKではこの投稿された画像を公式Tumblrでも流している(今のところ公式Tumblrには男女問わず流れてくるので僕は女の子のみ流れてくるRSSで見てますけど)。サイト側でもtwitterfacebookと並んでTumblrがインターフェースに組み込まれている。つまり公式Tumblrで流すだけでなくLOOKBOOKに投稿されたコーディネート写真を第三者Tumblrに流すこともウェルカムというわけだ。
本サイトがCGMとして上手く機能していれば(つまり投稿が沢山集まっていれば)Tumblrに流す材料には事欠かない。ま、正直なところ「おーオサレー」と思うような投稿は僅かだし「勘違いさん」も多いw。でも素人さんたちが一所懸命コーディネートしてモデルっぽいポーズで撮った写真は微笑ましく楽しくて見ていて飽きない。サイトの「人気読者モデル」とでもいうようなプチスターも生まれていて、どうやらそういうプチスターになるとサイトのスポンサーから定期的にウェアの提供がされているようだ。日本のファッション系サイト(日本は投稿よりも街撮りスナップサイトが多いのは国民性?)でも見かけるようになってきた「謎のアパレルブランド」アメリカンアパレルはその手のマーケティング手法に積極的だ(なぜ謎なのかは広告ビジュアルを見るとわかるというか余計謎が深まるというかw)。
LOOKBOOKには投稿ユーザーへの投票システムのようなものがある。沢山投票されると(LOOKBOOKの場合は♥を付ける)トップページにその投稿ユーザーは表示される。そして一定数の♥が付いたものがLOOKBOOK公式のTumblrに流れてくるようだ。多くのコーディネートが3桁半ば以上、ものによっては4桁reblogされている。
同時にアメリカンアパレルのサイト側でもそれぞれのアイテムのページでLOOKBOOKや個々人のブログへ「実際のコーディネート例」としてリンクが張られる。たとえばこんなサイクルショーツ。右下の「Seen and Submitted」からメールを送ると自分のブログなどにリンクを張ってくれる。

こんなコーディネートしてみたよ

アメリカンアパレルのサイトでも紹介

もちろん自分のブログにもアップ

投稿ユーザーたちは自身のブログでもコーディネートを紹介し、その横にはアメリカンアパレルアフィリエイトバナーという具合だ。この女の子は結構人気者でアメリカンアパレルサブブランドのWEBに最近モデルとして登場するようになった。LOOKBOOKやスポンサーはプチスターたちをファッションショーに招待したり、ユーザーミーティングのようなイベントを開いたりして「あたしもああなりたい」とユーザーの気持ちを煽ってどんどん投稿を集める。サイトが中心にあってスポンサーがいて、Tumblrはその加速装置と言えるだろう。ほぼ同じ手法で他のスポンサー(結構何社も)も展開しているし、LOOKBOOKと同じ会社が運営するもうちょっとオトナっぽいサイトChictopiaでも同様の展開だ。Chictopiaの公式Tumblrこちら

人気のある投稿ユーザーの人気のあるコーディネート写真はLOOKBOOKのコンテンツとして重要度が高い。でもそれをTumblrなどを使ってどんどん外に出してしまう(=拡散させてしまう)のは昨今の「フリー」の流れと通じるものか。実際、僕がLOOKBOOKやChictopiaからTumblrに転載したものは結構reblogされている(それが本サイトへの誘導につながっているかどうかはこちらからは不明なのだが)。

最近僕がLOOKBOOKからポストしたものだとこれが随分reblogされている→元ネタはこれ

LOOKBOOKのTumblr活用方法をヒントとして考えると、現時点でうまく使えそうな業態はポストする元素材がバリエーション豊富に確保できるCGM絡みのサイトか。ファッション系以外では料理レシピなんかうってつけだろう。料理の写真と特徴をTumblrに流して詳しいレシピは本サイトに誘導するとか。ちょっと考えればいくつか思いつくはずだ。もちろん、手間とお金をかければ企業が自前で元ポストの素材を大量に作ったり集めたりすることもできる。しかし(これは直感なのだが)一企業が自前で作り出したものを大量にポストすることは多くのフォロワーには支持されない気がする。それはたとえ超有名ブランドがブランド力全開で洗練されたものを次々と送り出しても難しい。Tumblrにはある種の「雑多感」が必要なのだ。これを意図的に作り出すことは難しい。

Tumblrの登場した初期に「無断引用」ということでネット上で議論があった。今もすっきり解決というわけではなく、相変わらず「Tumblrはグレー」という見方をする人も多い(このことは別の機会に詳しく書く)。引用された側の主張に「無断引用されることで自分のサイトへのアクセスが減る」というものがある。しかしこのLOOKBOOKのように自サイトの目玉とも言える「人気コーディネート」をTumblrで積極的に流すことで自サイトを中心としたアクセスの流れを加速させることができるケースもある。

この「サイトが中心にあってtwitterTumblrがそれを加速させる」という組み合わせ。これは僕自身にもリアルな感覚がある。このブログを書き、更新したことをtwitterでつぶやく。そうするとTL経由でブログを見に来てくれる人がいる。読んだ感想をtwitterで流してくれる。そしてどなたかがそのエントリの気に入った部分をTumblrにQuoteしてくれる。そうすると今度はTumblr経由でブログを見に来てくれる人がいる。一日に数万のアクセスがあるブロガーならばこんなことをやる必要もないだろうけど、このブログの一日のアクセスはせいぜい4桁に乗る程度だ。「沢山の人に読んでもらいたい」と思うならばブログとtwitter、そしてTumblrの連携は効果的だ。そしてTumblrには「次のネタ」としてして気になったものをストックしておく。そうすると今度は僕のTumblr経由で興味を持って「自転車ブログを書いてるのか」と読みに来てくれる人がいる。ホントにこの3つのリンクはビジネスの世界だけでなく、こういった個人レベルの情報発信にパワーを与えてくれると思う。
ブロガーだけでなく、flickrに写真をアップしているアマチュアカメラマン、pixivにイラストをアップしている絵師さんも、もっと自分の作品をtumblrにポストしてみてはどうだろうか。

そしてこの「サイトが中心にあってtwitterTumblrがそれを加速させる」という同じ直感で自転車情報サイトを立ち上げたのが須貝弦さんであり、それが彼の運営するCyclingEXだ。彼が直感を感じてCyclingEXを立ち上げた経緯はこの一連のエントリを読むとよくわかる。

■曜日感覚のないノラネコ[23]TumblrとTwitterこそ主役/須貝 弦
■曜日感覚のないノラネコ[22]秋はやっぱり自転車の季節だったらしい/須貝 弦
■曜日感覚のないノラネコ[21]自転車ブログメディアを始めて約半年/須貝 弦
■曜日感覚のないノラネコ[20]自転車ブログメディアを始めてみました/須貝 弦

CyclingEXのサイトにアクセスするようになった当時、僕はまだtwitterTumblrも使っていなかった。しかし自分がこの2つを使うようになって、僕が感じた直感と同じ感覚に基づいてこのサイトが運営されている(しかもたった一人で)のに気がつき興味を持った。須貝さんにはこちらからコンタクトをとって一度だけお会いしたことがある(今シーズン、チームNIPPOで走る宮澤崇選手を囲む会に僕からお誘いした)。

とりとめもなく自転車サイトのことやtwitterTumblrのことをお話ししたのだけど、その直感でビジネスとして自転車情報サイトをやってみようという「勢い」というか「いけるという確信」にちょっと感動した。それと須貝さんも僕も自転車業界的には「中の人」ではない(僕は自転車メーカーや自転車雑誌の関係者に知りあいがひとりもいない)。端っこの方にかろうじている感じというか、はっきり言ってただの自転車好きにすぎない。でも自分たちが「端っこ」から発信していることが、もしかしたら実は多くの自転車に興味のある人が欲している情報なんじゃないか、実は一番のボリュームゾーンなんじゃないかという直感もあった。その直感がどこから生まれたものなのかと言えば(手前味噌だが)僕にとっては自分の本の売れ行きであり、このブログのいくつかのエントリに沢山もらったブクマであり、須貝さんにとってはCyclingEXのアクセスの伸びだなのだと思う。
個人レベルでも丁寧に調べて丁寧に記事を書き、自分のブログやサイトとtwitterTumblrを有効に組み合わせれば、情報発信力は旧来のメディアと渡り合えるのではないか。そんな直感を共有する思いが、僕がCyclingEXを応援する理由だ。

Tumblrの話はあと2、3回続きます。よかったらお付き合いください。
日本の企業でTumblrを使っているとこってあります?僕が知っているのは昨年のモーターショーの時の日産。毎日、ショーの模様やそれに関係した記事をポストしていたけれど、ショーが終わって現在は停止中。他に日本の企業でTumblrを使っているところがあったら教えてください。僕は縁がないのだけれど、もしかしたら携帯のファッション系サイトとか、こういった有機的展開をやっているのだろうか。


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