自転車的出来事その2:ちょっと残念だった自転車イベント

先日(5/31)、CyclingEXの須貝さんにお誘いいただき「X2 TOKYO」という自転車プロジェクトのキックオフイベントにお邪魔した。場所はなるしまフレンドのすぐ近く、BS(ブリヂストン自転車)のショールームバイクフォーラム青山」。BSはこのプロジェクトのスポンサーでもある。
プレゼンテーションの模様はUstreamでオンエアされ、このプロジェクトのハッシュタグを付けたツィートがモニターに流れるという、イマドキ感あふれる会場の様子にオッサンは感心してしまうw
しかし、最初に正直に書いてしまうけれど、なんだかぴんとこなかった。このプロジェクトが何をやろうとしているのか僕にはよくわからなかったのだ。家に帰ってからサイトをじっくり見て回ってもやっぱりよくわからない。

「X2Tokyoはスタイリッシュな『自転車都市』として東京を世界に誇れる街にするためのプロジェクトです。」

うーん・・じゃあそのために何をやるのか。プレゼンテーションの間、自分の理解力が足りないのかと思い集中して話を聞いていた。それも途中の「ある発言」で集中が切れてしまった。
サイトで「4人のクリエーターが、自転車と東京を「つなぐ」活動を楽しく展開していきます」と紹介されているクリエーターさんたちがイベントにも登場した。そのなかの一人が「人の間を縫って結構とばします」と話すのを聞いて、僕は一気に気持ちが冷めてしまったのだ。彼は数年前に海外から日本に戻ってきて、海外では自転車に乗っていたけれど、日本に帰ってきてからは「車道がこわいのであまり乗っていない」という。車道上に人はいないので、彼は歩道を歩行者の間を縫うようにとばしているのだろう。「東京を世界に誇れる自転車都市にする」というテーマを掲げたプロジェクトのプレスイベントで、その中心人物の一人がさらっとこんなことを言ってしまう。「なんだか底が浅い感じ」と感想を言うと、須貝さんも苦笑していた。
この仕事をそのクリエーターに依頼する時に、今、東京と自転車が抱える様々な問題を誰かレクチャーしなかったのだろうか。或いは依頼を受けたクリエーターが自ら調べたり、さらに言えば数日間でも東京の街を走り回ってなにか実感を掴むようなことをしなかったのだろうか。うーん。それはプロジェクトのなかでこれからやるってことなのか。

自転車にハマっている著名人をイメージキャラクターとして起用して、トークショーでもやって「一丁上がり」というお手軽な自転車イベントもある。そんなお手軽イベントに比べれば、このプロジェクトはお金も手間もかかっているのだと思う。自転車にどっぷりはまった人よりも、少し距離のあるクリエイターのほうが斬新なものが出来るのではないかというのもあるだろう。自転車に興味がない人に「自転車って楽しいよ」ということを本当にわかってもらうのは結構むずかしい。まず振り返ってもらうために、アートだとかデザインだとかエコロジーだとか「お砂糖」をまぶして自転車を語る。そうしたほうがスポンサーもつきやすいというオトナの事情もあるだろう。
いや、いいと思うのだ。自転車に興味を持ってくれる人が少しでも増えれば。自転車をモチーフにした素敵なアート作品が出来ればそれも素敵なことだ。歩道を突っ走るクリエーターがトンチンカンなものを作ったとしてもそれはそれだけのことだ。だけど、もしそこに社会性のあるメッセージを込めるのならば「底の浅いもの」は止めて欲しいと思う。そのことだけは気にかかる。
自転車は皮膚感覚の乗り物だ。日常的に走っている人にとってはあたりまえのことが、走っていない人にはなかなか気がつけなかったり理解できなかったりする。それでピントがずれたメッセージになったとしてもそれはご愛敬だけど、ピントがずれたまま強いメッセージを発信すると興味を持ってくれた人に誤解を与える場合がある。特に「こうやって走るとカッコいい」とか「こういう走り方がクールだ」とかは誤解しやすい。
今まで自転車に興味のなかった人に興味を持ってもらうように働きかける。もし興味を持ってくれたなら、そのタイミングでメッセージを送れば人は容易にそれを受け入れる。身近な例をあげれば、特定のクラスタに影響力のある何人かが「ピストにはブレーキをつけないほうがカッコいい」というメッセージを送った結果「なにが起こったか」というのは皆さんよくご存じのとおりだ。
極端な例だけど(前のエントリにもつながるけれど)ビギナーが初めてどこかのチームの練習に参加する。最初は勝手がわからない。そんなタイミングで「安全確認して行けるようなら信号無視でいいんだよ」とチーム員が皆信号無視したらビギナーはそれに引きずられてしまうだろう。

このプロジェクト、去年に引き続き二年目なのだからそれなりに反響もあったのだろうし、自転車に詳しいスタッフも沢山いるだろう。しかもスポンサーはBSだ。ピントのずれたメッセージを送ることはないだろう、とは思うのだが。
あ、そうそう。このプロジェクトの一環としてバイクフォーラム青山で配布している「ジテンシャ・マナーブック」はよく出来ている。近くを通ったら立ち寄って貰う価値ありよ。

会場でその数日前にtwitter上で言葉を交わした方に偶然お会いしてびっくりした。ハッシュタグを付けたツィートが流れるモニター上にその方のアイコンを発見して「あれ??」と思ってReplyしたら「どこ??」と聞かれて辺りを見回したら、目の前1mの場所にいた方だったw(その節はどうもでした。@ArtKookieさん)。twitter枠でのご招待だったそうで、これも今っぽい。最近クロスバイクに乗り始めたという彼女とその数日前に交わした会話がちょうど
「走ってみてつくづく感じる。自転車乗り、実に多くの人が信号無視・逆走り・すごい横断・・・びっくり。自動車に嫌われるのも無理ないわ。」
という内容だったのがなんだか象徴的。

それから元全日本チャンピオンで現在はBS販売企画部の田代泰崇さんとお話しすることができた。田代泰崇さんというより、僕にとってはBSアンカーの田代選手、ニックネーム「しょぼちゃん」だ。「しょぼちゃんと呼ばれたの久しぶり」と苦笑していたけれど、会社ではそう呼ばれていないのでしょうかw、現役時代と変わらないスリムな体型と、捲りあげたパンツのすそからのぞく脚はあいかわらずびっくりするくらい細い。この脚で古賀志林道の上りをアウターで登っちゃったりしたわけで。

こういったプロジェクトをスポンサードすることは、今まで自転車に関心のなかった人を振り向かせたり、ママチャリではない「ちょっといい自転車」に興味を持ってもらったり、結果的にビジネスの裾野が広がることを考えてのことだろうと思うけど、BSのような大きな会社に大きな声で言ってもらいたいことは「もっと他にある」と思う自転車乗りも沢山いるかもね。

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