COG(コグ)はこんなことに拘った電子書籍リーダー


前のエントリで紹介した電子書籍リーダー(フォーマット)のCOGは、今のバージョンではページ単位でデータを扱っている。扱えるデータはJPEGPNGなどの画像データ、PDF、HTMLなど。今のバージョンではテキストデータをそのまま扱っていないのでフォントの大きさや色を変えることは出来ないが(ページ自体を拡大表示することは出来る)いずれ後のバージョンでePubなどのフォーマットも扱えるようにする計画もある。また今、ページ内にムービーや位置データなどを埋め込むバージョンも開発中だ。
機能的には前のエントリで書いたようにシンプルだ。だから(逆に)テキストのみではない凝ったページレイアウトの電子書籍を作りたいという場合は自由に作ったデータを扱うことが出来る。COGの第一弾となった「すべての仕事がやりたいことに変わる - 成功をつかむ脳機能メソッド40」は紙の書籍と同じく図版を多用し、文章中の重要なポイントだけ赤文字にしたり、今読んでいる章がわかるように章のタブをつけたページレイアウトにした。そういう図版の多い書籍や雑誌的なページレイアウトのものにはマッチする(実際、今、写真をメインにしたビジュアルブックをCOGで出したいという引き合いが来ている)。
それとシンプルな機能に絞ったなかで、ページめくりの操作感には拘った。この企画がスタートした時点ですでに沢山のフォーマットやリーダーアプリがあったし、開発中にiPadが発売となりiBooksも出た。しかしどれもページを送る(めくる)感じが僕にはしっくりこなかった。いろいろな機能が付加されたものもあるけれど、基本的な機能であるこの操作感がイマイチだと根本的な読書体験を損なうと考えた。いや、むしろ軽快なページめくり感があれば僕にとって他の機能はオマケだ。
iPadの発表の時、ジョブズがプレゼンテーションで見せたiBooksの紙の本のページをめくるような動きを、最初は「おお−!」と思っていたけれど、実際に使ってみると、これはUI(ユーザーインターフェース)というよりは単なるギミックだと感じた。最初は田中さんにこの機能を盛り込みたいとリクエストしていたけれど、最終的には組み込みをやめた。個人的には「なにもわざわざ紙の本に似せる必要はないじゃん」というのが結論だった。iPadの横位置ページ見開きならばページがめくれるギミックにも多少の意味もあるかもしれないけれど、iPhoneの画面で1ページごとにめくれたって特に意味はない。要するにページが送られた(順送り・逆送り)ことがはっきりわかればいい。むしろ僕の感覚ではフリックで次々と画面がスライドして送られていくほうが気持ちがいい。それはiPadの画面サイズでもそうだ。 ユーザーにとって最も自然な「フリック感」とは?それはiPhoneのホーム画面をフリックする時の感覚だろう。あのフリック感でページをめくっていければいいと考えた。で、これには拘るつもりだったのだけど、僕があれこれ言う必要が全くないほど田中さんのチューニングは素晴らしかった。

ページ送りはフリックだけでなくタップでも可能だけれど、ここも少々拘った。画面の左半分をタップすると順送り、右半分をタップすると逆送り(縦書きの場合)というリーダーアプリが多いけれど、これが僕には馴染まない。閲覧中になにかの拍子に意図せず画面を触ってしまった時にページが送られたのか戻ったのか、一瞬わからなくなるときがあるからだ。4人であれこれ考えた結果、画面のほぼ全面、どこをタップしても順送り、戻る場合はフリックのみとした。ページを送るのも戻るのもフリックで操作してもいいし、送りはタップ、戻るときはフリックという使い方でもいい。どちらの場合もiPhoneの小さな画面の「どこに触れるか」ということは意識しなくていい。

iPhoneのホーム画面の操作感と同じページめくり感ということと同じく、栞もiPhoneユーザーなら操作に慣れているインターフェースであるSafariのブックマークと同じにした。栞の画面はSafariのブックマークと同じく横スライドで栞を挟んだページを選び、タップすればそのページにジャンプできる。

ページを一気に移動するスライダは悩んだ末に右側に置いた。画面下部(=縦持ちで画面の幅)だとページ数が多い場合に目当てのページを探し当てるのに微妙な操作が必要になる。スライダが長ければ大雑把な操作でも目当てのページを見つけやすくなると考えた。でも右側にスライダを置くと左手で操作したときに場合によっては画面中央に出したページ表示が隠れてしまう(左側に置けば右手で操作したときに)。ここは今後、もっといい方法があれば改善したい。

こんな感じで、iPhoneユーザーなら誰もが違和感なく馴染む操作感に拘った。そんな僕らなりの工夫をした電子書籍リーダーであるCOGを使って「やろうとしていること」と書くと、なんだか大層な計画があるような感じだけれど、そういうわけではなくて、要は個人で電子書籍を出してみたいという人に使って貰えればいいなと思っているのだ。その場合「フォーマット使用料として何パーセント」という設定はしない。フリーで使ってもらって構わない。その辺りは次の次のエントリで説明する。それと僕なりの電子書籍に対する考え方も書く。

その前に・・・次のエントリではもうひとつの「じゃあ作ってしまえ」で作ってしまったものを紹介する。ヒントはこちら